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溶解度パラメータの適用範囲外

溶解度パラメータの適用範囲

Hildebrand溶解度パラメータ(sp)やHansen溶解度パラメータ(HSP)は、物質間のエネルギー的な相互作用を捉え、溶解性や濡れ性をはじめとする親和性を推測するために開発された有用なツールであり、材料開発やデバイス開発において、最適な溶媒選定や材料設計に広く活用されています。

しかし、すべての物理現象・化学現象が溶解度パラメータで説明できるわけではありません。これらのエネルギー項は主に「平衡状態」に関する情報を提供するものであり、速度論的な現象や電子レベルの相互作用については適用が難しい場合があります。

溶解速度(速度論的要因)

溶解度パラメータは「物質が最終的にどれだけ溶けるか(平衡状態)」を示すものであり、「どれだけ早く溶けるか(溶解速度)」については、推測することはできません。溶解速度は、以下の要素に依存します。

•粒子の大きさ
•溶液の攪拌速度
•溶質表面の状態
•拡散係数

たとえば、砂糖を水に入れたとき、粒子が細かいほど速く溶け、水を攪拌すると溶解速度が早くなります。このような「速度論的な現象」は溶解度パラメータでは推測が困難です。

dissolution_rate
溶解速度に影響を与える因子

化学反応を伴う溶解現象

溶解度パラメータは異なる物質が混ざった時のエネルギー変化を評価する指標であり、化学反応を伴う溶解性や混和性を推測することはできません。たとえば、以下のような溶解現象は溶解度パラメータでは説明が困難です。

•酸と塩基の中和反応を伴う溶解現象
•酸化還元反応を伴う溶解現象
•溶質の電離を伴う溶解現象

dissolution via a reaction
化学反応を伴う溶解現象

まとめ

溶解度パラメータは溶解性や物質の相溶性評価において有用なツールですが、速度論的現象や化学反応を伴う現象には適用できません。材料開発やデバイス開発においては、溶解度パラメータの利点を活かしつつ、適用範囲外の現象に対しては他の理論や解析手法を併用することが重要です。