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Hansen Sphere法

Hansen Sphere法の基本概念

Hansen溶解度パラメータ(HSP)は、材料の溶解性や分散性を評価するために有用な指標です。これを実験的に求める方法の一つが「Hansen Sphere法」と呼ばれる方法です。この方法では、特定材料と複数の溶媒の溶解性や分散性を観察することで求めます。基本的な考え方は以下の通りです。

1. 実験:任意物質と溶媒を混合させ、「良溶媒」と「貧溶媒」に分類
2. 3次元プロット:各溶媒のHSP(δd,δp,δh)を座標としてプロット
3. 球の描写:良溶媒が球の内部、貧溶媒が球の外部となる球を探索

この球をHansen Sphere球と呼び、中心座標が材料のHSPと定義されます。また、球の半径は相互作用半径(R0)と呼ばれ、溶解する範囲を示します。

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Hansen球によるHansen溶解度パラメータ算出

Hansen Sphere法におけるポイント

Hansen Sphere法では、材料の分子構造や組成が未知であっても、実験的にHansen溶解度パラメータを求めることができる優れた方法ですが、適切なHansen溶解度パラメータを求めるためには、いくつか注意すべきポイントが存在しています。

1. 溶媒選定:実験に使用する溶媒は、広範なHansen溶解度パラメータ範囲をカバーすることが望ましいです。例えば、ヘキサンとヘプタンといった溶解度パラメータが似た溶媒を用いるよりも、ヘキサンとアセトンといった多様な溶媒を数多く検証した方が精度が向上します。

2. Fitting率:Hansen Sphere球の内部に貧溶媒、もしくは球の外部に良溶媒が存在する場合に、Hansen Sphere球のFitting率が低下します。このFitting率が高いほど、Hansen Sphere球が実験データをよく再現していることを示唆します。

数式

他方、溶解性の判定基準には実験者の主観が介在する場合があるため、「完全に透明である状態」を良溶媒とするか、「わずかな濁りは許容する」とするかで結果が異なることがあります。この任意性を最小化するため、分光法や粒径測定法などの客観的手法を併用することが推奨されます。ただし、過度に高いFitting率を求めると球の半径が小さくなり、適用範囲が狭くなる可能性があるため、適切なバランスが重要となります。

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ポリプロピレンのHansen溶解度パラメータ

溶解性以外の判断基準

Hansen Sphere法では良溶媒と貧溶媒の判定が必要ですが、これは溶解性だけでなく、様々な物理現象をもとに判断がなされています。

•分散性:粒子が溶媒中で均一に分散しているかを観察することで判定
•膨潤:材料が溶媒を吸収して膨む現象から判定
•接触角測定:材料表面での溶媒の濡れ性(接触角)から判定

このように実測する材料に応じて、適切な物理現象を観察することで良溶媒と貧溶媒の判定を行うことができます。

まとめ

Hansen Sphere法は、Hansen溶解度パラメータ(HSP)を実験的に求めるための手法です。3次元座標を用いて、直感的に材料と溶媒の親和性を理解できるため、材料開発やデバイス開発に幅広く応用されています。

一方、Hansen Sphere法を活用して、Hansen溶解度パラメータを求める際には、検討する溶媒の選定、判定基準の任意性、Fitting率の値に留意しながら、検討を行う必要があります。