塗料や次世代半導体材料の塗布プロセスのインクの開発現場において、材料の既知の良溶媒が環境・人体への有害性が高く、スケールアップする際に使用が困難なことがあります。この場合、代替溶媒を探索する必要がありますが、その際に溶解度パラメータを1つの評価軸として活用することができます。
本記事では、塗布型半導体デバイスのインク開発を想定し、ハロゲン系溶媒が良溶媒であるpoly-TPDの代替溶媒を、一切実験をせずに探索してみたいと思います。
塗料や次世代半導体材料の塗布プロセスのインクの開発現場において、材料の既知の良溶媒が環境・人体への有害性が高く、スケールアップする際に使用が困難なことがあります。この場合、代替溶媒を探索する必要がありますが、その際に溶解度パラメータを1つの評価軸として活用することができます。
本記事では、塗布型半導体デバイスのインク開発を想定し、ハロゲン系溶媒が良溶媒であるpoly-TPDの代替溶媒を、一切実験をせずに探索してみたいと思います。
まずは、poly-TPDの溶解度パラメータを分子構造から推定して求めます。分子構造の入力が複雑な場合は、SMILES記法を用いることもできます。
計算結果を確認すると、溶解度パラメータは(dD:18.3, dP:3.6, dH:6.8)と推定されました。poly-TPDの販売会社であるLuminescence Technology Corp.によれば、poly-TPDはクロロホルムやクロロベンゼンに可溶です(参考:こちら)。計算結果にクロロホルムとクロロベンゼンの溶解度パラメータをグレーでプロットすると、poly-TPDの溶解度パラメータと隣接しており、良溶媒であることが示唆されています。
poly-TPDの溶解度パラメータが推定されましたので、ハロゲン系溶媒を除いたデータセットを用いて、混合溶媒を含む良溶媒を探索します。今回はstandardプラン データセット v1.0で探索できる溶媒74種類から、ハロゲン系溶媒を除いたデータセット用いて、poly-TPDの良溶媒を探索します。
SoluVisionが予測した溶媒は、トルエンとベンジルアルコールの混合溶媒でした。その他にもハロゲン系溶媒以外で構成された混合溶媒が複数提案されています。クロロホルムとクロロベンゼンの溶解度パラメータをグレーでプロットすると、今回提案された混合溶媒のほうが、poly-TPDの溶解度パラメータに近い位置にあります。したがって、ハロゲン系溶媒と同等かそれ以上の溶解性を持つ溶媒であることが期待されます。
このように、実験をする前に溶媒を絞ることで、代替溶媒を探索する際に最初のスクリーニング評価を行うことができます。今回の事例では、ハロゲン系溶媒外の溶媒にはあまり制限をかけていませんが、溶媒データセットを法規制などを含めてスケールアップ時に使用できる溶媒に絞って設定することで、さらに詳細な検討が可能です。
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