[膨潤] ゴム材料の耐薬品性

耐薬品性の評価プロセスをラクにしたい

各種用途に使用されるゴムや樹脂材料は、使用環境に対して耐性を持つことが重要です。しかし、単一溶媒だけでなく、混合溶媒まで網羅的に評価しようとすれば大量の実験が必要で、非常に手間がかかると思います。

例えば、こちらの記事にある地球温暖化対策の事例のように、ガソリンにバイオ燃料を混合した場合、混合前の溶媒それぞれに対しては高い耐性を持つ材料が、それらの混合溶媒に対しては耐性が低くなる現象があります。

このようなケースは溶解度パラメータを用いることで一定、その耐性を推測することが可能です。溶解度パラメータを使って、先のような懸念点を抽出することができれば、研究開発の効率化につながり、新たな課題の発見にも繋がります。

本記事では、ゴム材料の耐薬品性の評価を想定し、フッ素ゴムがガソリンとバイオ燃料の混合溶媒に耐性を持つかどうかの初期評価を、公開されているデータシートを元に検討してみたいと思います。

フッ素ゴムの溶解度パラメータを求める

まずはフッ素ゴム(FKM)の溶解度パラメータを求めます。ただし、フッ素ゴムは複合材料のため、製品毎に組成が異なります。今回はこちらのデータシートを参考に、溶媒に浸漬した後のFKMの重量変化率が30%以下の溶媒を貧溶媒(×)、それ以上は良溶媒(〇)として、溶解度パラメータを求めました。

データシートを参考にする場合は、溶解度パラメータを実験値から求めるフローに進み、各溶媒への耐性の〇×をつけて計算を開始します。今回は9種類の溶媒の情報を使って、溶解度パラメータを計算しました。

計算結果を確認すると、溶解度パラメータは(dD:18.0, dP:12.3, dH:8.6, R:8.2)と計算されました。FKMの溶解度パラメータを中心にグレーの球が表示されており、球内にプロットされた溶媒はFKMに対する良溶媒であることを示唆しています。球内に存在する大半の溶媒はFKMに対して膨潤し、球外の溶媒はFKMに対して、膨潤しないので、データシートの結果を反映した溶解度パラメータが得られていると考えられます。FKMの溶解度パラメータが推定されましたので、ガソリンとバイオ燃料を混合した際の混合溶媒に対する耐薬品性を評価します。

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フッ素ゴムの溶解性データ
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フッ素ゴムの溶解度パラメータ

混合溶媒のデータセットを作る

ガソリンとバイオ燃料を混ぜた溶媒がFKMを溶解もしくは膨潤しにくいかどうか調べます。ガソリンは複数の成分で構成されていますが、今回はトルエンで代用し、バイオ燃料はエタノールを用います。この2種類のみの溶媒データセットを使って混合溶媒を含めた良溶媒を探索します。

結果は、単一溶媒はグレーの球外にプロットされ、混合溶媒は球内にプロットされました。これは、トルエンおよびエタノールの単一溶媒よりも、トルエン50%,エタノール50%の混合溶媒のほうがFKMと膨潤しやすいことを示唆しています。この結果に関しては、こちらに実測結果と溶解度パラメータの対応を示唆する先例があります。また、これまでに種々の溶解度パラメータが高分子材料の膨潤度の予測に使用されています。SoluVisionはシンプルなユーザーインターフェースと、溶解度パラメータの計算だけでなく、それを用いた結果の提案までをセットで行えるため、事前学習コストが低く、すぐに結果を見ることができます。

材料開発においては、ある溶媒に対する耐薬品性を知りたい、またはある溶媒への耐性の高い材料を作りたいが、知見がないケースでは、溶解度パラメータを一つの研究開発の指針として、検討に取り入れることで、評価プロセスを効率化することが期待されます。

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溶媒データセット
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フッ素ゴムの耐薬品性データ
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